ソチオリンピック・スケートでオランダが圧倒的に強かったその理由とは? KeyMaker 2014年2月24日 スケート靴ではなく、スーツに秘密があったようです...。 ソチオリンピック・スケート競技でオランダの活躍がすさまじかったですね。 金メダル7個 銀メダル7個 銅メダル9個 この結果は、それまでのオランダの記録を大きく上回る大勝利でした。 ああ、なんてうらやましいんでしょう。 日本が、20個以上のメダルを獲得したら、それこそ国中が快感の喜びの渦に巻き込まれますよね。 でもどんな秘密があるんだろう?? オランダ、なぜこんなに急に強くなったのでしょうか? 知りたいですよね、是非とも。 世界中のスポーツマスコミの記者も同じようにその秘密を探っているようです。 私もその秘密を探しました。 そして、それらの様々な情報を収集したところ、次の事が解ったのです。 オランダが強くなった理由は大きく分けて3つの要因が有りました。 1.選手の身体能力を向上させた。 2.国全体でメダルを取りに行く体制をとった。 3.最先端の航空工学をスケートに応用した。 それぞれどんな秘密があったのか一緒に理解してみましょう。 一番分かり易い1.はもう説明はいらないですよね。 世界中の選手達は、自分の肉体をメダルのために鍛え上げ続けています。 オランダだけでは無いのです。 しかし、人間の肉体ですからメダルを取るための体力には限界があります。 世界の選手達は、肉体の限界まで能力を高めているので身体能力だけでは、特定の個人しかメダルを取ることが出来ません。 国全体でメダルを取ることが出来ないのです。 そこで、オランダは国としてソチに目標を定めることを約15年前に決めたのです。 国全体でメダルを取りに行く体制をとったのです。 そして、そのために様々な投資をしました。 例えばオランダ・ヘーレンフェーンにあるティアルフ・スケートリンク・スタジアム(Thialf stadium)です。 スタジアム・ディレクターのエルコ・ダークスさんがインタビューに答えています。 ティアルフ・リンクは世界で最も標高が低い場所での最高速リンクの一つです。 「ソチのオリンピック・リンク、アドラー・アリーナを作った技術者達は、同じく標高が低いソチのリンクを、ティアルフ・リンクと同じように高速な氷にするため技術や空調コントロール方法をこのリンクに1年前から学びに来ていたのです。」 「ティアルフ・リンクは、ソチの母といえるでしょう。」 なんてことでしょう、ソチのスケート場はオランダのスケート場と同じだったのです。 しかもその事実をオランダ人は、事前に利用できたのですよ。 つまり、オランダの選手はオリンピックリンクと同じリンクでトレーニングできていたのです。 この事は選手達のメンタルにも大きく影響したでしょう。 さらなる国レベルがありました、技術面での最先端航空テクノロジーの導入です。 それはタービュレイターと呼ばれる小さくジグザグの突起をスーツに応用することで、空気の乱流効果による空気抵抗の低減を実現したのです。 デルフト工科大学・航空工学エンジニア-のナンド・ティマーさんは、5cm程度の長さに、ミリ単位のジグザグの突起があるストリップ(バンド)をスーツに貼り付ける開発を行いました。 そしてオランダは、チームの選手のスケートスーツにこの小さな突起物を取り付ける対策をとりました。 タービュレイター例1 飛行機の翼で使われている。 タービュレイター例2 新幹線のパンタグラフにも使われている。 どちらも、ぎざぎざの部分の事の名称です。 そしてオランダはこの技術をモノにしたのです。 実際にソチで使われていたスーツについてこの部分にポイントがあるのだと思いますが、はっきりはしていません。 このスーツは4年前のモデルで見た目がはっきりしているところが話題となったようです。 しかし、ソチで使われたスーツには目立った特徴が認められません。 目に見えないのであまり話題にならないのかもしれないです。 オランダの技術を参考に、アメリカメリーランド州のアンダーアーマー社がスケートスーツ”Mach 39”(マッハ39)に応用しています。しかもあのロッキードマーチン社と共同で開発したスーツでした。 でも、アメリカは成功しませんでした。アンダーアーマー社のスーツではパフォーマンスを発揮できなかったと、アメリカスケートチームは感じています。 アメリカはすごいですね。 スケートスーツ開発が競技に重要であることを認識していた事と、ソチに向けて開発していた事実が有ることは、国としてさすがと言わざるを得ません。 競技既定の範囲内で、スケートスーツを開発する事がソチでは重要になるという事に気がつかない国も多いのですから。 オランダはこの技術によって成功し、比類無き強さを得ました。 特に空気抵抗の低減の効果が高い長距離スピードスケートで、金銀銅を独占する結果になったのです。 すばらしい成果を上げました。 だけど技術だけでは、これほどまでの効果は上げられない、と思います。 それは、オランダ国民の意識にあるスケートの位置づけです。 オランダの子供達は、2歳で歩き、3歳でスケートをして、4歳で自転車に乗る、といわれるほどスケートになじんでいるのです。 スケートはオランダでは最も人気のあるスポーツの一つなのです。 そして競技人口の多さが、金銀銅とメダルを独占できる土台になっているのです。 そして、競技にかけるスケーターや関係者達を支える経済的なインセンティブ(動機付け)も提供されているようです。 (このインセンティブについて、彼らはあまり語ってはくれません) オランダは強くなれる下地の上に、技術の武器を得て、ソチオリンピックで結果を上げたのでした。 さて、オランダが得たこの航空工学のスピードスケートの武器ですが、標高が低い場所にあるリンクで効果を発揮するように思われます。 これは、標高が低い場所ほど空気抵抗の影響が大きくなり、オランダが開発したタービュレイターの効果が発揮できるのです。(空気の密度が高くなる) 標高が高い場所で効果があるものは、また別に開発する必要があるように思われます。 つまり、2018年平昌ピョンチャン冬季オリンピックに向けての技術的な武器を開発しないと、日本のメダルは期待できません。 技術開発でメダル獲得の数が変わるという事実から、今後各国も同じように技術開発を目指すでしょう。 各国に開発するチャンスがあるのですから、日本もオランダに負けずに技術開発していただきたいものです。 国レベルの技術開発に勝ち抜けば、選手のメダル獲得が十分期待できるとオランダが示してくれたのですから。 日本は技術開発して勝利を得る実力があるのに、出来ないのは国レベルのメダル獲得への覚悟が全然足りないからでしょう。選手の能力が足りない等という事は無いのです。技術の武器があれば、メダルを量産して私達に歓喜の嵐を巻き起こすことも出来るはずです。 今後、オランダはこの技術的優位を絶対に手放すことはないでしょう。スケートスーツへの規制制限などでも自国の有利のためにひっそりと反対するものと想像できます。 そこも他国は考えるべきです。